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02舞踊家の鋭敏な足を魅了した靴。

ダンサー・振付師 宮原由紀夫

世界中を飛び回って育まれた、しなやかで自由な感性。

3歳のとき、たまたま家族で見ていたテレビ番組にダンスの場面が映し出される。それを見た宮原少年は即座に「これがやりたい!」と親に告げた。彼のダンス人生はこうして思いがけない形で幕を開けることとなったのだ。佐賀県の地元の教室に通いながらダンスを学んだ宮原氏は、進学した大阪芸術大学で本格的にクラシックバレエに取り組んでいたが、そこで彼はあらためて自らの原点を見直すこととなる。「やはり自分はもっと新しいダンスをやっていきたい。もっと広い世界を見たいし、いろんなダンスを勉強したい」。その思いは彼を海外へと向かわせた。

大学を卒業するとまずタイをはじめ東南アジアのトラディショナルなダンスを見て回った。その後エジプトではカイロのオペラハウスに属するバレエ団から仕事をもらうことができた。その後はコンテンポラリーダンスが盛んなイスラエルやバレエの本場・ヨーロッパへも渡った。しかし宮原の渡航した時期はオーディションも少なく、なかなかいい仕事に就くことができなかった。そんなときに見つけたのが新潟市が運営する国内唯一のコンテンポラリーダンス劇場専属舞踊団である「NOISM」のダンサー募集だった。彼はすぐさま帰国してオーディションを受け見事合格。子どものころから夢見ていたプロフェッショナルダンスカンパニーで主要パートを踊る傍ら、並行して自身の創作活動も続けていった。現在はNOISMで出会った、藤井泉らと一緒に京都で素我螺部(Scarabe)を立ち上げ、関西を中心に活動している。クラシックバレエに始まり、コンテンポラリーダンスを経て、エンターテインメントとしての楽しさも取り入れてきた宮原氏のダンス。そのしなやかで自由な感性は、Bluestoneのあり方に重なる部分を感じさせる。

靴を選ぶポイントは、素足のような感覚で履けること。

ダンサーにとっての足は、単なる身体のいちパーツにとどまらない。力強く大地を蹴り、しっかりと着地の感触を味わい、そして軽やかにステップを踏む。足はまさに身体表現の最前線といっても過言ではないだろう。当然のことながら足の感覚には鋭敏にならざるを得ないはずである。そんな宮原氏が語った靴へのこだわりは「つねに大きめのサイズのものを履くこと」。その理由は実に単純で「足が窮屈に感じるのがイヤだから」ということだった。5歳ごろまで外でも裸足で過ごすことが多かったという宮原氏にとって、この「素足の感覚」はとても重要なことなのかもしれない。キツ過ぎたりゴワゴワしたりしない、靴を履いていないような足にピタッとフィットする感覚。彼が靴に求める機能はそこにあるのかもしれない。

「だからBluestoneは履きこなしていくうちに足にフィットしていって、足と一体化していくような感じがあったので、ものすごく履きやすく感じました」。そう語る宮原氏。日に日に足へのフィット感が高まってくるのが楽しかったという。「たぶん実際の重量より履いていて重さを感じないのも、このフィット感のためだと思いますね」。

なにより惹かれたのは、オリジナルな天然のブルー。

「海へ行くときに履きたい」。そう語る宮原氏はこれほど鮮やかなブルーのレザーは見たことがないという。いろんな国を渡り歩き、その国ごとの色を見てきた彼が、彼自身これまで存在を知らなかった藍染のレザーの持つ独特の青に魅せられたのだ。しかも、光の当たり具合によってまったく印象が変わってしまう。そして履くことによって生まれる傷やシワがなじむことで個性的な味わいが出てきて、履き始めたころとはまた違う表情へとどんどん変化していく。そのことに何より驚いたのだそうだ。

ふだんあまりこうしたブルーの靴は持っていないという宮原氏。あざやかなブルーのドレッシーなスーツにBluestoneを合わせてスペシャルな場所に出かけるのもいいし、あえて派手な色と組み合わせたりするのも楽しいと笑う。青が映える場所、青を強調したいファッションのときに履きたい。彼は頭の中でこの個性的な靴に合う服のコーディネートを楽しんでいるかのようだった。

人は質や技術ではなく、楽しさを共有することを求めている。

素我螺部はコンテンポラリーダンスでアート的な要素もあるが、老若男女を問わずさまざまな人が見にきてくれるのだという。その理由について宮原氏は「ダンスに興味のない人にも楽しんでもらえる公演にしたいというモットーでやっているんです」と語ってくれた。もちろん最初は彼自身の表現したい世界を具現化するところからスタートしていく。しかし観客を無視し自己満足になってしまっては意味がない。ストイックに究める部分と、みんなにわかりやすくオープンであること。つねにそのせめぎ合いの中で、彼は表現を磨き上げていく。「そのあたりの哲学はBluestoneに似てるかもしれませんね」。宮原氏がそう語るように、Bluestoneも高級紳士靴で使うような素材や製法を採用しながら、より多くの人に親しんでもらえるスニーカーとして仕上げている。「そこにシンパシーを感じたんです」。宮原氏は続けて、靴にせよ服にせよ、やはり身につけるものだからこそ共感を持てるアイテムを選びたいとも語った。選ばれし美しいものを、多くの人とシェアしたい。矛盾するこの課題に取り組む宮原氏は、自らの足もとで青く輝く藍染のレザーシューズに自らの姿を重ねていたのかもしれない。

宮原由紀夫(ダンサー・振付師)

1986年、佐賀県生まれ。大阪芸術大学でクラシックバレエを学ぶ。卒業後は西洋のコンテンポラリーダンスを学ぶために渡欧。2010年より新潟市が運営する国内唯一のコンテンポラリーダンス劇場専属舞踊団「NOISM」で活躍した。そこで知り合った仲間、藤井泉らとともに2014年に「素我螺部(Scarabe)」を結成。独創的な世界観を持つ舞踊集団として関西を中心に人気を博している。